<自分の過失分も支払ってくれる保険ってあるの?>
今回は、
前回のコラムにも出てきました「人身傷害補償保険」について触れます。「人身傷害補償保険」は、自動車事故によって被保険者が死亡したり、後遺障害または傷害を被った場合に加害者から賠償金の支払われない被保険者の過失分も含め、保険金額を限度として保険金が支払われる保険です。
日米保険協議決着後、自動車保険の自由化が進行していますが、当時、外資のA保険会社が「リスク細分型自動車保険」を武器に日本に上陸して来ました。「従来の保険に比べて3割引き」を謳い文句にCMを流したそうあの会社です。それを迎え撃つ日本の損保会社はリーディングカンパニーである業界最大手のT損保会社の動向に注目しました。
いきなり価格競争に突入し、戦国時代の幕開けかと各社戦々恐々としていましたが、この会社は意に反して、保険料は従来の保険より高くなるが補償内容を充実した商品の開発・販売という戦略に打って出ました。これが「人身傷害補償保険」の登場です。
従来の保険は、過失が発生した場合、損害額から自己の過失分を差し引いた金額しか相手側から受け取れませんでした。この保険は過失の有無に関係なく、損害額が自分の加入している保険会社から保険金として支払われ(保険金額限度)、示談交渉の煩わしさがありません。
一般に示談交渉は保険会社が行ってくれますが、過失割合の決定等をめぐって最終的な賠償金額が決まるまで長期間要するケースがあります。あなたが、自動車事故によって死亡したことを考えてみてください。遺族の方は始め深い悲しみに暮れるのですが、ドライな言い方をすれば最終的にはお金の決着をつけることになります。
過失割合や賠償金額に納得がいかず、感情的なものも相まってやり場のない憎しみへと変わっていきます。悲しみが完全に払拭できるわけではありませんが、補償を少しでも早く、また満額受けられれば経済的な面では残された遺族の救いにはなるはずです。
ただ、注意しなければならないのは、「人身傷害補償保険」はあくまでの実損払いする傷害保険であり、保険会社毎の約款上の支払基準により保険金が決定されるということです。つまり、保険会社により支払額が違ってくるケースもあるということも念頭に入れておいてください。さらに、傷害保険であるがゆえに保険金の額に異議があったとしても通常、訴訟などで争うことは難しなります。
この手の保険は、海外でも「ノーフォルト保険」という形で採用されています。休業損害等、基本的な経済的損失については過失の如何にかかわらず、自分の保険会社から支払われますが、損害賠償請求権に基づく提訴には一定の制限を設けている州もあります。
また、通常、自動車損害賠償責任保険(強制保険)の特約で引き受けています。この「人身傷害補償保険」は、自己の過失が100%の場合や家族については歩行中も対象になりますので、多少保険料を多く支払ってもつけて置きたい保険です。
by 安井敏夫(CFP 東京都足立区)