<ひき逃げにあったらどうする?>
Aさんは毎朝日課になっている愛犬との散歩に出かけましたが、横断歩道を歩行中、信号を無視して交差点内に突入してきたトラックに轢かれ死亡してしまいました。
このトラックはそのまま逃走してしまい今でも加害者は判明していません。相手さえ分かれば、相手の掛けている自動車保険から賠償を受けられるはずなのに・・・。
Aさんの遺族は、このまま泣き寝入りしなければならないでのしょうか?
殺人や傷害など故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた被害者の遺族や重度の傷害を被った被害者などに対しては、「犯罪被害給付制度」などによる援助・救済制度があります。
一方、自動車事故においては、ひき逃げや無保険車、盗難車による人身事故で、加害者側から賠償を受けられない被害者を救済するため、「政府の自動車損害賠償保障事業」があります。
請求から支払いまでの流れは、以下の通りです。まず、請求者は政府から委託された保険会社の窓口へ請求書類一式を提出します(請求書類は保険会社に置いてあります)。
保険会社は、自賠責損害調査事務所に損害調査の依頼を行い、調査事務所では、請求書類に基づいて、事故発生の状況、支払いの適格性(自賠責保険の対象となる事故かどうか、また、傷害と事故との因果関係など)および発生した損害の額などを公正かつ中立な立場で調査を行います。
最終的な支払いの決定権は政府(国土交通省)にあり、決定・支払いの通知を受けた保険会社がてん補額を支払います。
年間5,000件ほどの事案を政府は順番に処理していくため、事案によって異なりますが、政府に届いてから6ヶ月、請求からは1年以上かかることもあります。
Aさんの遺族はこの制度を利用すれば、一定の範囲内で保障を受けることができます。その額は自賠責保険と同じ基準になっており、死亡事故の場合は3,000万円です。
ただし、上記のケースではAさんの過失は発生しませんが、被害者にも落ち度があった場合は、その過失分だけ保障額が減額されてしまいます。
Aさんのような死亡事故だけではなく、傷害事故(120万円限度)や後遺障害が残るような事故(障害の程度により4,000万円〜75万円)であっても保障されます。このような制度があることをぜひ覚えておいてください。
ただし、保障額からも分かるように充分な保障が得られるケースばかりではありません。次の機会に説明する人身傷害補償保険(任意保険)に加入することによって、しっかりした補償を受けるのも一法です。
by 安井敏夫(CFP 東京都足立区)